「厳しい状況にある中小企業に200万円、個人事業者に100万円の過去に例のない現金給付を行う」。
新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令した安倍晋三首相が、記者会見などで幾度も強調した中小企業や個人事業主への現金給付策を公表しました。
その内容の一部が、閣議決定した経済産業省の2020年度補正予算案で明らかになりました。
今回はその給付条件と給付額、政府としての狙いについて所感を述べたいと思います。
給付条件
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin_kojin.pdf
個人事業者への給付条件は主に前年同月比較によるとのこと。
具体的には、2020年中のコロナの影響を受けた月の売り上げが、前年の同じ月の売り上げと比較して50%以上減少した場合に、まずは給付条件を達成できるということです。
例えば、去年の3月の売り上げが100万円だった場合、コロナの影響で今年の3月(つまり先月)の売り上げが50万円以下だった場合には給付条件を達成したということになります。
給付額
条件を達成しさえすれば全員が100万円もらえるというわけではありません。
給付額の算定式も公表されていて、次の式になります。
給付額:前年の総売上(事業収入)―(前年同月比▲50%月の売上×12か月)
これだと少しわかりにくいのでかみ砕いて説明すると、今年給付条件を達成する原因となった月の売り上げに12をかけたものが今年(2020年)の売り上げだと仮定します。
そのうえで、前年(2019年)の確定申告時の総売上から先程仮定した2020年の売り上げを引いた額が個人事業者へ給付される額となります。
先程と同様、3月の売り上げが50万円だった場合を想定します。
3月の売り上げが50万円(去年3月の売上である100万より50%減)であったことにより給付を受けることになったあなた。
給付額の算定上、そんなあなたの今年の収入は50万円×12=600万円であると仮定され、前年の総売り上げ(ここでは1,200万円であるとします)から引くと、1,200万円ー600万円=600万円となります。
給付額の上限は100万円になるので、600万円がもらえるわけではありませんが、100万円は国から給付されることになります。
政府の狙い
大きく分けて2つ考えられます。
1つ目は、自粛要請についてです。
個人営業の店の中でもコロナの影響をあまり受けていない店舗もあると思います。
感染者が出ていない地域や、感染拡大防止に対して意識の低い方が多い地域などでは、客足がそれほど減らず、生活に困窮しているわけではないが客足が少し減ったというレベルの店も多いと思います。
そういった店では売り上げが50%減少したという給付条件を満たさないケースが多いと思うのですが、前年の総売り上げがそこそこあるような店では、1か月店を閉めてその月の売り上げを減らして意図的に50%減という条件を達成した後、来月からは通常通り営業するという形をとることによって非課税の100万円を獲得することもおそらく可能なんですよね。
100万円ほしいし、それなら1か月店を閉めようじゃないかとなったらそれはそれででいいわけですよね。
店が閉まるということは外に出る人もいなくなるわけですから、100万円が外出自粛に貢献したということです。
100万円というコストを払って客足のいまだにある(感染拡大の可能性が大きい)お店を1か月間閉めてもらう狙いもあるのかなと感じました。
2つ目は、給付額についてです。
100万円を本当に困っている人だけにささやかながら給付するにはどうすればいいのかを真剣に考えたのがわかりますね。
こういう時に問題になるのは不正給付ですよね。。
フリーランスも対象になるわけですから、去年から副業感覚でやっていた人たちもここぞとばかりに100万円をもらいに来るようなことも想定されますが、これは給付額の算定式によってガードされています。
去年の3月だけ働いて1万円もらったひとが、今年の3月の売り上げが5,000円だからといって申請したところで4,000円しかもらえません。
そんな4,000円をもらうためにわざわざ手続きをしに役所まで行くのかというとそういう人はかなり少ないのではないかと思います。
また、こういう給付は迅速性が大切(家賃を払えないほど急を要するの人もいる)ですので、ある月の収入に12をかけて今年の売り上げと仮定することによって、売り上げが50%減になったタイミングで申請を行えるわけです。
人に応じて給付を変えるための良い式だと思います。


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